わすられたもの、わすれようとするもの、わすれられないもの。

北ドイツの大きな駅にある遺失物管理所に、ヘンリーは新任職員としてやってきた。婚約指輪を忘れた娘、ナイフを探す大道芸人、そして持ち主とともに列車から飛び降り、忘れ去られた正方形のかばん。遺失物管理所には様々な人が訪れ、彼らの忘れ物から物語が生まれてゆく。

淡々とくり返される毎日からこぼれおちてしまったもの。
正方形のかばんから生まれた物語がとりわけ心に響きました。
穏やかな日常を不意に覆う理不尽な影も、薄明かりの太陽によってすこしずつ消されてゆくことだってある。
語られない余白を、ゆるゆると楽しみました。

遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)

遺失物管理所 (新潮クレスト・ブックス)