姫が愛したダニ小僧〜Princess and Danny Boy〜

後藤ひろひと川下大洋によって結成された「piper」の第一作『piper』を改題しての再演です(4回目)。

骨組みだけの廃墟ビルに、佇む男がいた。
彼は思い出のその場所で、自らの命を絶とうとしていた。ところがそこで彼は奇妙な男と出会う。
男が語り始めたのは、不思議な物語だった。
愛しのダニ小僧を探して、船長や洗濯娘、剣士らを率いて旅にでるすみれ姫。侍従長とその手先たちの追跡を逃れて、彼女はダニ小僧に会うことができるのか?

自殺しようとする男(ラサール石井)と謎の男(後藤ひろひと)とのやりとり、そして現実なのか妄想なのかどんどん突き進んでゆくすみれ姫(富田靖子)たちとそれに巻き込まれた祐一(ユースケ・サンタマリア)とエリ(佐藤康恵)の物語。どちらもこれでもかというくらい笑わされてしまうのに、終盤は笑いながらもじんわりと泣けてきてしまいました。わたしは感情の切り替えが不得手で、シリアスなシーンに笑いがはいったりすると混乱して、憤慨することさえあるのですが(八つ当たりです……)、不思議と後藤ひろひと作品ではそういう気持ちにはなったことがありません。理屈で考える隙がないほどの勢いと、世界に身を委ねられる信頼感、みたいなものが作品にあるのかなあ。


予備知識なしで観に行ったとはいえ、すみれ姫を富田靖子が演じていることに最後まで気づかなかったのはいくらなんでも反省です。ユースケ・サンタマリアは普段TVで観ている彼と殆ど変わらない感じで(すみれ姫の冒険に最後の最後まで突っ込みをいれている役どころだし)、それがそのままやれているところが凄いのかも。piperに2004年から加わった竹下宏太郎の演技にとても惹かれたので確認してみたら、米米クラブのメンバーだったのでびっくりしたのでした。

あ、ウマが素敵でした。ぬいぐるみをあてたくてトレーディングカードをあやうく買うところでした……。