「サマータイムマシン・ブルース」

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時は真夏。とある大学の「SF研究会」の部室では、SFなんて研究していない男子部員5人と写真部の女子2人が暑さにぐったりしていた。それというのも前日のハプニングで年代物のクーラーのリモコンが壊れてしまったから。ところが、そんな彼らの前に突如タイムマシンが出現した!
「昨日に行って、壊れていないリモコンをとってくればいいじゃん!」
意気揚々と昨日に向かった彼らだが、思わぬ事態が待ち受けていて……?

本広克行監督による、ヨーロッパ企画の舞台「サマータイムマシン・ブルース2003」の映画化。
脚本はヨーロッパ企画上田誠が担当しています。
わたしとヨーロッパ企画との出会いがまさにその「サマータイムマシン・ブルース2003」なので、舞台版への思い入れはたっぷり。それでも映画版は十分楽しむことができました。
こまごまとした感想などを。

 舞台版から大きく変わったのは、登場人物。SF研6人(甲本、新美、小泉、石松、曽我、小暮)から酒井さんが演じていた小暮がはずれて5人に、写真部3人(柴田、伊藤、照屋)から瀬戸中さん(2005は角田さん)が演じた照屋がはずれて女子のみ2人になっています。彼らの役割は他の部員や、映画版のオリジナルキャラクターに割り振られていて、台詞回しやギャグまでほぼ舞台版と同じでした。理系ツッコミの小暮は顧問の保積、大学にやたら詳しい照屋は管理人とかに振られている感じかなあ。
 舞台版は最初から最後まで「部室」で物語が繰り広げられていましたが、映画版では部室、グラウンド、銭湯「オアシス」、駅前の映画館と彼らをどんどん追っていきます。舞台版では想像することで楽しんでいた場面を実際に映像で観ることができるのは、映画版の良さのひとつだなあと思います。さらにそこに登場する脇役(「オアシス」の番台さんとか映画館の主人とか神出鬼没の謎の人物とか)が舞台で活躍する個性の強い役者さんたちで、そのあたりが楽しめたのもお得な気分でした。その他に映像化ならではの表現で面白さが増したと感じたのは、「昨日」と「今日」が同時に観られたり(画面を上下に分割して、今日から昨日へのタイムトラベルを表現したりも)、そもそもの発端となったリモコンが壊れるシーンがドミノ形式のスローモーションになっていて、可笑しさがより高まったこととか。タイムマシンやタイムトラベルの表現もベタなところがまたよかったです。
 
 と、ストーリーを知っていてもいい感じに笑って楽しめたのですが、なんとなく物足りないような気がしたのも事実。具体的に言うと、舞台の時はそれはもうお腹が痛いくらいに大笑いしていた台詞回しやシーンが、映画版では手放しで大笑い、にはならなかったことがしばしばあったのです。その理由を考えていてひとつ浮かんだのが、映画版では「彼らだからこそのやりとり」という感覚が、あの部室に集まった面々からあんまり感じられなかったから、ということ。彼らの関係が、そういう台詞が許されて成立する関係に思えないというか……学生というあの場所とあの時間を共有している仲間という感じがあんまりしなかったのです。舞台版は演じている面々がもともとそういうところを共有してきた人たちだから、それと比べたらもう仕方がないことなのですけれど。配役そのものは悪くなかったです。川岡大次郎のほうが甲本っぽいなあ、とかちょっと思ったりしたけれど。

 ヨーロッパ企画の面々もこっそり登場していますし(わたしはそこでおおうけしてしまったけど、映画館なので爆笑はこらえました。特に酒井さんとか中川さんとか素敵!)、舞台知っているからこその楽しみもあります。
舞台版を観たことのない方も、この映画をきっかけにヨーロッパ企画のことを知ってもらえると嬉しいなあ。
夏休みの思い出におすすめです。