ママ先生探偵団

担任の先生が病気になってしまい、4年2組には臨時の先生がやってきました。自分たちと同じ年頃のこどもがいる先生に、早速ついたあだ名は「ママ先生」。みんなの名まえを覚えようと張り切る先生は、ぽっかり空いた席に気がつきます。その席に座っているはずの松井ゆかりは、亡くなった母親のかわりに家をきりもりしていて、なかなか学校にこれないというのです。そこで、クラスメイトの飼っていたねこが行方不明になったのをきっかけに、クラス委員の健一が結成した探偵団に、先生はゆかりの様子をみてくるようにお願いするのですが……

担任の先生と生徒たちの探偵団。ママ先生はおおらかであったかくて、生徒たちもそれぞれ長所があるいいこたち。それだけに、読み終えて「もったいないなあ」と思わずにはいられませんでした。
どうしてかなあ、と考えたのですが……台詞という名を借りた説明ばかりで話がすすめられてしまうからなのかも。登場人物がそれぞれどういう人物なのか、ということをひたすら言葉で説明してしまうのです。その最たるのが、ママ先生は新任の先生だから、という理由で行われる「自己紹介」。生い立ちから性格、そしてそのこがどんなこなのかを自然に感じることができるはずのエピソードまで本人に喋らせてしまいます。そりゃあ一目瞭然かもしれないけど、そういうことに字数を使うのはもったいない。物語の核になるゆかりちゃんにいたっては、彼女自身の言葉やふるまいを直接知ることができるのは終盤になってから。4年2組のみんながゆかりちゃんに対して抱く気持ちを、同じように感じて応援したりどきどきしたりすることがちょっと難しいなあ、と思いました。
あとは現実的なものとそうでないもののバランスの悪さが挙げられます。学校生活でのエピソードなんかはとても現実に即しているのに、警察やマスコミについてはちょっとありえないことばかり。社会問題も盛り込みすぎるほど盛り込んでいるというのに、「こんなことあるわけないよー」って思われてしまったら、驚きや喜びも半減してしまうのではないかしら。
とにかくもったいないなあ、とばかり思ってしまったのでした。

ママ先生探偵団 (フォア文庫)

ママ先生探偵団 (フォア文庫)