緑深い大地に

蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫)

蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫)

蜘蛛の巣 下 (創元推理文庫)

蜘蛛の巣 下 (創元推理文庫)

atkさん(id:atkonthenet)の日記で知って、読みたい読みたい!と思っていた作品です。
ようやく本屋さんで発見して、わくわくして読み始めました。
舞台は7世紀のアイルランド。緑豊かな谷間の氏族の族長が殺され、そこには血まみれの刃物を握りしめた若者がいた。
誰もが彼を犯人と信じて疑わなかった。しかし、都から犯人に正当な裁きが下されるよう派遣された裁判官フィデルマは不審を抱き、真実を明らかにするべく、調査を始める。


自分では想像することもできない、7世紀のアイルランド。歴史や宗教について、たいした知識もないわたしにとっても、描かれる世界はとても鮮やかで、それだけでも読み応え十分でした。注釈を読むのも苦にならず。
農耕と牧畜を生活の中心にすえた谷の人々の暮らしは一見穏やかで、でもその閉ざされた場所には、悪意や暴力がひそんでいる。
その「外」からやってきたフィデルマによって、族長の後継者をはじめとする谷の人々たちの隠されたものが明らかにされていくところは一気に読んでしまいました。
本書はシリーズ5作目なのですが、邦訳は1作目。次もでているので楽しみです。

ただ(内容とは直接関係ないのですが)、注釈のなかに、本シリーズの他作品の内容に触れているものがいくつかあって、「ももももったいない!」と思ってしまいました。それは邦訳がでたときのお楽しみ!にしておきたかったなあ。